インタビューシリーズ『仕事人が語る』第二弾元ラグビー日本A代表・現在は経営者のキム・ヨンデ さん
アジアで、さらには伝統国以外で初開催となったラグビーワールドカップ、そして日本代表のベスト8初進出と日本中が応援に沸き立ったスポーツ、ラグビー。
かつて日本A代表として数々の試合に出場した男性が、PHYTOGRAMのインタビューにお答えくださいました。
元ラグビー日本A代表フランカー、そして現在はステーキハウスBECOを大阪市内に複数展開される、経営者のキム・ヨンデ さんです。
スポーツ選手から店舗経営者への大きな転向。
フィールドを変えてもなお疾走を続ける、仕事人<しごとびと>の想いを、ご堪能ください。
2019年10月某日。大阪市北区にオープンされたばかりのステーキ食堂BECOハービスプラザ店へお伺いしました。
西梅田駅から徒歩1分の好立地。ハービスプラザビルを地下2Fへ降りると深紅の看板が目に入ってきます。
迎えてくださったオーナーのキム・ヨンデ さん。スーツの上からでもわかる逞しいスタイルは、現役時代の勇姿を彷彿とさせます。
Q(PHYTOGRAMインタビュアー):まずはご経歴についてお教えください。
A(キム・ヨンデさん ):私立中学校入学後、ラグビーと出会いまして、2年生の真ん中ごろまで通っていました。勉強よりラグビーの方が楽しくなり、「もっとラグビーを一生懸命やりたい」と私立中学をやめて地元の公立中学校に転校したんですね。それまでは勉強ばかりやってるような子で、スポーツにのめりこむようなタイプじゃなかったんですけど。ラグビーで初めてのめり込みまして。
勉強のことは放り出して、この頃からラグビーだけで生きていきたいと思うようになりました。
高校は島根県の江の川高校(※1)に進み、2年生からレギュラーで花園(=全国大会)に出ていました。
大学は大阪産業大学に進みましたが、少し燃え尽き症候群のような状態でした。そんなに強くないチームで2部リーグの真ん中くらいの強さだったんですけど、やり出したらやっぱり燃えてきて。
自分で(プロの)チームに、トライアウト(※2)とかビデオを送ったり、練習に参加させて欲しいと連絡したり。
最初は近鉄ライナーズとプロ契約して、卒業後いきなりプロ生活ですね。
その当時は大量採用をして、使える子だけ残っていく形。1年で契約切られる子もいました。幸いにして僕は1年目から試合に出させて頂いて。
※1・・・現・石見智翠館高等学校。全国大会の常連校で、チーム内でレギュラーを取れば必ず全国大会に出れると言われる強豪。
※2・・・プロスポーツチームが入団を希望する選手を集め入団テストを行うこと。各チームがドラフトやトレードで選手を獲得する以外に、一般から広く選手を募集する手段として用いられる。
---その後、海外での活動を経てHONDAヒート、リコーブラックラムズ、NTTドコモとチームを移りながら不動の人気と実力を積み重ねて来られたキムさん。
HONDAとリコー在籍中にはついに、日本A代表に選ばれたそうです。
Q:日本代表に選ばれた時の思い出などお教えください。
A:僕の場合は公式戦テストマッチというところの試合出場がなかたんですけど、日本代表スコットという枠に選んでもらいました。
代表に合宿で参加させてもらったり、A代表(※3)として試合に出させていただいたりして。日本代表を目指して日々頑張っていたので、ようやくここまできたかという感慨深い思いでしたね。
連絡は突然でした。結構活躍していた時に、「日本代表スコットに入ったぞ」といきなりチームのディレクターから電話が来て。そのあと合宿に出て、という感じです。
自分の名前が日本代表スコットに入っているのが、めっちゃ嬉しかったですね。
※3・・・日本代表スコットに選ばれた選手の中から、ワールドカップ出場メンバーや日本代表合宿参加メンバーが選出される。ワールドカップ等国代表同士の対抗試合に出場するメンバーを「フル代表」、その下に「A代表」が設けられ、さらにその下に7人制代表チームが編成される。
Q:先日のラグビーW杯で日本が戦ったスコットランドとも、日本A代表としての遠征中に試合をされたとか。
A:感動しましたよ。マレーフィールドという伝統的な大きなスタジアムでさせてもらいましたが、スタジアム内はスコットランドの応援の人たちばかりで。
当時は日本は認められてなくて「ウォーミングアップ試合(ゲーム)だ」と言われていたんですけど、キャップ試合(※4)ではないんですね。
レギュラーの選手も出ていましたが公式戦としては認められず。A代表の試合ということでしたが結構いい勝負をしまして、僕の中ではすごく思い出に残っています。
スコットランドは意外とやりにくくはない、とは思っていました。先日のW杯スコットランド戦も店内画面で流していて、大盛り上がりでした。
※4・・・キャップとはテストマッチ(国代表同士の対抗試合)に出場すること。ワールドカップで3試合出場すれば、キャップ数が3獲得となる。ただし、キャップが獲得できるのはフル代表の試合なので、日本代表対欧州クラブチームの試合などは加算されない、
---実は店内にはディスプレイが複数設置されており、様々な角度・座席から観戦可能になっていました。
お肉を食べながら試合観戦が出来るという、素敵な設備です。
Q:高校時代からフランカーのポジションでいらっしゃいましたが、そのポジションにいたからこそ身についた考え方などお教えください。
A:フランカーだからということはないんですけど。自分が痛いこと・しんどいことをして、チームにプラスの状況を与えるということですね。
ボールを奪いに行ったりタックルをして痛い思いをし、地道に1mでも2mでも進めて次の選手にボールを渡すという。
自分が犠牲になってチームのためにどれだけハードワークができるか、ということを学ばせてもらいました。
Q:華やかにランを決めていくバックスと比べて、フォワードはどうしても密集の中にいて目立ちにくいように見えますが、その中でなぜフランカーというポジションを選ばれたのですか。
A:やっぱり楽しさというのが走ることよりも、密集での肉弾戦の中に楽しさを見出してしまうと、フォワードの方が楽しくなったんですね。
僕は精神的にあまり強くないので、バックスはすごく怖いんですね。失敗しても成功しても全員に絶対見られるので。
フォワードはちょっとミスしても周りの人がカバーしてくれます。スクラムを組むのも、もちろん全員がきっちりやっているのですが、ちょっとしたミスとか絶対あるはずなんです。
それをしてもすぐ隣の人がカバーしてくれます。「ユニット」と呼ばれるフォワード全体が強いかどうかですね。全員が完璧なプレーはできないので、補い合うという。
Q:ラグビー選手として体格や体力を作り上げるまでに、意識して取り組まれていたことをお教えください。
A:やっぱりお肉をひたすら食べることだけにこだわって、現役生活中続けていました。
海外の選手に勝つには魚食べてたら勝てないんですよ。その時は栄養学を学んだとかではないんですけど、肉にかぶりついている時には野生に戻って「絶対に海外選手には負けへんぞ」と気持ちも高めてくれますし、今思えば高タンパク低カロリ―の食事で、赤身肉には脂肪を分解する作用の「Lカルニチン」という成分も多く含まれていることなど、情報が後からやって来ました。
やっぱり間違っていなかったなと(笑)健康でダイエットにもお肉はいい。
運動して身体をいじめぬいて、そのあとに赤身肉を食べるというルーティンですね。筋肉がついて余分な脂肪が落とされていくという。
Q:現在開催中のラグビーワールドカップでは日本チームが粘りを重ねてベスト8まで勝ち進みました。当たり負けしない、現在の強い日本フォワード勢をどうお考えですか。
A:僕が現役でやっていた5年前と比べて、全体的に日本の選手も体が大きくなってスタンダードが上がっているんですね。
食事とトレーニングがきっちりされている。外国人の選手にも負けないくらいの体格をしているのが大きいと思います。
Q:日本代表時代のチームメイトの皆様の印象をお教えください。
A:今のキャプテン、リーチ・マイケル選手は僕が初めて代表合宿に呼ばれた当時に彼も入っていて。まだ若いのに、日本語がうまい。性格もまじめで。ただ今より体格が細かったんですね。
最近だと先日の日本対トンガ戦のあと、選手たちにステーキを持って行ったんですね。その時も相変わらず紳士で「ありがとう」という気持ちを伝えてくれて。やっぱりすごく紳士だなと思いました。
ルーク・トンプソン選手は当時のチームメイトなので、今でも会えば冗談を言い合うような仲です。
---店内の一角には額入りでユニフォームを展示中。数々のサインが、かつてのチームメイトとの絆を思わせます。
Q:ラグビー選手としての生涯のライバル、と思う方はいらっしゃいますか。
A:誰かをライバルとか思ったことがないんですよ。常に考えているのは、今日の自分が昨日の自分よりよくなっているかということだけ。明日は今日よりよくなれるか。
ひたすら自分のことだけ考えていました。昨日の自分より強くなれれば、絶対いつか頂点にいけるじゃないですか。
人と比べても意味がないので。
Q:現在のラグビー日本代表、そして応援するファンにメッセージをお願いします。
A:まさかこんなにラグビーが盛り上がると思わなくて。ただ、一過性のものにしたくはないので、これを機にルールや面白さなどを興味をもってくれているうちに僕らが発信して、ちょっと好きになりかけている人を本当に好きになってもらえるように、働きかけをしていきたいです。
今までのファンの方はもっとファンを増やすように活動したり、選手・元選手や僕なんかはお店を通じてルールを説明しながら、輪を盛り上げて発展させていけたらと思います。
子供向けのラグビースクールもありますね。ラグビーは危険と言われますが、リスク以上のリターンがあります。
痛いとかしんどさの中に、チームのためで自分がどれだけできるかということを小さい頃から考えると、人間形成に大きな影響があると思います。
小さな子には危ないと思うので、タックルのない「タグラグビー」(※5)から始めるとかもいいと思いますよ。
※5・・・タックルの代わりに腰の紐をひっぱるラグビー。人数も4〜5人と少なくても始められる。
---話題は第二のスタートとなったお店に移っていきます。店内には美味しそうな匂いがたちこめてきました。
Q:一言で表すと、ここはどんなお店でしょうか。
A:BECOグループ全体は「赤身肉を美味しく食べられる」お店。焼肉ではなくステーキで赤身肉を味わうことができます。
昔から赤身肉のステーキが好きだったんですけど、現役の時にはなかなか食べられるお店がなくて。
場所によって店舗ごとに食べ方・業態を変えて大阪で展開しています。
Q:ご来店されるお客様はどのような方が多いですか。
A:創業当初から女性のお客様が結構多くて。赤身肉は健康にいいとか、高タンパク低カロリーな食事を取ることは自分自身の美容や健康にいいということが浸透されてるんですね。自分の体に対しての意識が高い方。
ただ単にお肉が好きという方もいらっしゃいますが、意外と女性が多いです。
Q:お客様とはカウンター越しの会話やお見送りなどをされる機会が多くありますか。
A:創業当時は僕もホールに入って接客していたので、そういう会話を大事にしていました。
今は経営者として各店舗の社員や店長に任せていて、それぞれのスタイルがありますので。
基本的にはカウンター越しにおすすめしたり、一回来ていただいたお客様の顔を覚えて、次の来店に繋げるようにとは言っています。
Q:お店をしていて一番やりがいを感じる瞬間は何ですか。
A:それはやはり、一度食べにきたお客様がもう一度来てくださること。この瞬間が一番嬉しいですね。僕もですし従業員みんなそうだと思います。
Q:選手とオーナー、2つの仕事の違いや難しさ、反対に共通点や活かせていることは何ですか。
A:選手時代でもリーダーなどそういう立ち位置をすることが多かったんです。やるのは一緒でも今の方が難しい。
選手の時は、何月何日の試合に勝つという明確な目的を持っている集団なので、そこに対して手段に落とし込むことが容易だったんですよ。
飲食店や会社は目的が明確になってもそれぞれの目的が違うところに向いてたりして、会社としての目的が理解できない・浸透できていなかったり、違う方向に向いてしまう社員がいたりなど、組織を動かす難しさを感じますね。
Q:これからどんなお店にしていきたいとお考えですか。
A:せっかく作ったBECOというこのシリーズのブランディングですね。
(BECOの商品が)いいものであるということがお客さまに、みんなに認知される。そんなブランドになるためにお店があったり、僕がいたり、というのがあります。
もともとBECOというのは東北の言葉で牛のことを指します。響きもよかったし気に入ってつけました。
最後の母音がオーだと、よくある「BECOる」など、「る」をつけて女性が言いやすいかなと。
「最近BECOってないな〜」「そろそろBECOろうや」
というワードが、みんなの中に出るぐらいのブランドにしたいですね。
Q:一番のおすすめメニューは何ですか。
A:レモンステーキです。佐世保発祥の郷土料理というか、いろんなお店で愛される料理なんですけど。あまり関西には馴染みがなくて。
京橋本店や心斎橋店は炭火焼ステーキのお店なんですが、もともとこのハービスは炭火を使ってはいけないというルールがありまして。
鉄板焼きなのでもう一味加えて、付加価値というか、同じBECOという名前だけどここのお店にしかないものを作ろうと。オリジナルのソースを僕と料理長で開発しまして、甘くてすっぱいソースを上からかけて食べて頂くスタイルです。
---実は当日、スタッフがこのおすすめレモンステーキを注文させて頂きました!
ジューシーながら、脂っこくなくあっさり食べられる赤身肉ステーキ。
レモンでさっぱりとさせた味わいを楽しんでいるうちに、「えっ、もうなくなっちゃったの?」と思うくらいにどんどんお箸が進む美味しさです。
女性でもペロリと食べられるので、人気なのが頷けます。
---お店の魅力やポリシーをお伺いしたところで、話題は選手時代に戻り、当時の肌トラブルについてお伺いしました。
Q:スポーツ選手の方は運動による汗・皮脂分泌や土埃など、肌トラブルの要因と触れる機会が多かったのでは?
A:肌悩みはありましたね。やはり、汗をかく量が多いですし、日焼けもあるし汚れがついたまま長時間そのままでいないといけなかったりトラブルはありました。
ニキビも現役時代は結構あって。今もたまに出るんですけど。気にしてスキンケアや日焼け止めを塗ったり、汚れをこまめに落とすことを意識していました。
僕らラグビー選手は、意外に練習前にシャワーを浴びるんですよ。練習が始まると汗をかいて雑菌が繁殖するので、一回汗流してから練習着を着るという感じです。
Q:選手時代から現在まで続けているスキンケア方法やアイテムはありますか。
A:選手時代からの癖なんですけど、まめに洗い流しいています。でも泡を使うのを1日1回までにしています。1日何回もシャワーを浴びたとしても。
そうしないと必要な皮脂まで流してしまってカサカサに乾燥しまうんです。洗い過ぎないように心がけています。
体を洗うときはあわ立てた泡だけで洗います。背中だけはタオルを使いますが。
あとはこすらずに、湯船にゆっくり浸かって体を撫でるなど。結構それで汚れが落ちるみたいです。
---メーカー顔負けの知識とケア方法に、スタッフも驚くばかり。
現在もツヤツヤとした健康的なお肌で、お手入れの成果かと思うと納得です。
Q:スキンケアについて、周囲の方と話されたりおすすめし合う場面はありましたか。
A:ロッカールームではみんなそれぞれの化粧水と乳液などを自分用のものを置いて、お風呂上がりはクリームをぬったりするんです。
外国人の選手はいい匂いのするクリームを使っていたりして、それを貸してもらったり。
みんな好きなブランドをそれぞれ使っていました。僕は若い頃ロクシタンなど、いろんな色や香りのするものを集めていました。
Q:一度PHYTOGRAMをお使い頂きましたがどうでしたか
A:洗顔フォームは泡が柔らかくて、すっごくクリーミーでした。僕は他の化粧水とかも色々試したんですけど、刺激が強いのか赤くなることもあって。
でもPHYTOGRAMは肌になじんで赤くならずしっかり浸透してくれました。
お風呂上がりはそっとタオルで水分をとって、すぐに化粧水を入れて、浸透したら乳液でペタペタしています。
PHYTOGRAMはボトルを開けて数プッシュなので、とても使いやすいです。毎回同じ量が使えますし。
Q:今後、男性がスキンケアやメイクをしていくことについてどのようにお考えですか。
A:年齢を重ねてきて改めて思うんですけど、一番おっさんになったなあと思うのは肌だと思うんですね。
なのでさらに本腰をいれてケアしていこうと思っています。今年37歳になるので。
Q:ありがとうございました。
---選手時代はもちろん、今も経営者として全力で走り続けるキムさん。
常に仕事の最前線に立ち続ける男性が、年齢を感じさせないお肌で周囲を魅了していく姿にはとても惹きつけられるもの。
ラグビー界の未来と赤身肉業界を支えるキム・ヨンデさんを、PHYTOGRAMはこれからも応援していきます。
インタビューシリーズ『仕事人<しごとびと>が語る』
第2回は、元ラグビー日本A代表でBECOオーナーのキム・ヨンデさんにお聞きしました。
次回の更新をお楽しみに。
<ステーキハウスBECOについて>
BECOグループ公式サイト:https://steak-beco.jp/
Facebook:BECOグループ
食べログ:ステーキ食堂BECO ハービスプラザ店
大阪府大阪市北区梅田2-5-25 ハービスプラザ B2F
TEL:050-5597-8321
ランチ 11:00~15:00(14:30ラストオーダー)
ディナー 17:00~22:30(22:00ラストオーダー)
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