インタビューシリーズ開始。『仕事人が語る』第一弾
人形浄瑠璃文楽太夫の豊竹咲寿さん
三味線・人形、そして太夫が詠み上げる義太夫節からなる古典芸能、
人形浄瑠璃<文楽>。
文楽太夫としてご活躍中の豊竹咲太夫さんが人間国宝に認定されたニュースは、耳新しいことと思います。
その愛弟子である豊竹咲寿太夫さんに、PHYTOGRAMからインタビューをさせて頂きました。
仕事に向ける情熱、20代から30代への変化・葛藤…そして自分自身の肌について。
弱冠29歳の若手太夫が語る、仕事人<しごとびと>としての想いを、ご堪能ください。
2019年7月某日。大阪は国立文楽劇場にて、お稽古を終えた豊竹咲寿太夫さん(以下、咲寿さん)の楽屋へお伺いしました。
涼しげな浴衣姿で迎えてくださった咲寿さん。
背後の化粧台には、お持ちくださった床本(※1)を置いて、インタビュースタートです。
※1・・・ゆかほん:文楽において語り手の太夫が、公演の際に見台(けんだい) の上に置いて使用する詞章本。和紙に手書きで作られるため、この時の表紙にはご本人”咲寿太夫”のお名前入り。
この日は事前に、公演日の24時間内訳と脳内図をアンケートとしてご記入頂いていました。
Q(PHYTOGRAMインタビュアー):
公演中の1日について、詳しくお聞かせ下さい。
A(咲寿さん):
午前11時に開演してお昼の部・夜の部があり、夜の8、9時前に終わることが多いですね。
公演中は自分の舞台の他に、師匠の舞台もあり、一門の方のお着替えのお手伝いもあり、ずっと何かしているという感じです。
公演期間は3週間ほどになるので、(公演終了後になると)次の公演まで1週間しかなく、公演期間中から次の公演のお稽古もしています。
それ以外の時間は、他の先輩の舞台を袖から見ていたり、床の裏(※2)で聞いて勉強しています。
絶対自分がいないといけない時間もあれば、いなくてもいい時間もあるので、その時間で他のことをさせて頂いたりもします。
寝ないと生きていけないので、7〜8時間は寝ないとだめですね。
※2・・・文楽では客席上手に舞台から客席へ斜めに突き出た「床」があり、太夫と三味線はここに座って演奏します。
床には、円盤状に切られた「盆(ぼん:文楽廻し、とも)」があり、中央のついたてで仕切られています。その向こうには太夫・三味線が座っていて、盆が半回転すると、舞台の側へ登場する仕組みです。
Q:師匠である豊竹咲太夫さんを、劇場まで車で送り迎えされたりしますか?
A:そうされる方もいますが、一門それぞれに違います。うちの一門は師匠ご自身が車で来られて、みんなでお出迎えをします。
そして舞台のお手伝いをして、最後に舞台を一緒に出て、また他の方のお着替えを手伝い、師匠が帰られるのをお見送りするという形です。
Q:公演のない日も忙しそうですね。
A:公演のない日の方が忙しくないこともないですね。
だいたい師匠の家にいることが多くて、私末弟ですので。10年以上末弟なんですが。
ずっと内弟子のようなことをしているんですよ。通いですけど。師匠の起床する時間から行って、起床を手伝って。
だから、執事みたいなものですね(笑)身の回りのことをします。掃除もかけたりとか、朝食のご用意をしたり。
師匠ご自身のお稽古の時は自宅でされるので、その時はそばに控えて聞いています。
自分の稽古の時には文楽劇場へ行き、稽古をして、また師匠の家へ帰って師匠の残りの用事をしています。
毎日違いますが、夜6〜8、9時ごろまでいてて、帰っていいよと言われるまでいます。
Q:なかなか自分の稽古の時間を取るのが難しそうですね。
A:自分のお稽古も間をぬってしないといけないので。とは言っても三味線弾きさんがいらっしゃることなので、三味線弾きさんのご都合もありますし。
三味線弾きさんとお稽古するまでに自分の中で語りの部分を固めてしまって、三味線弾きさんとお稽古する時にはもう、合うようになってないといけません。
そして最後に、師匠に聞いていただく形です。
Q:師匠からOKが出るまでですか。でも日程がありますよね。
A:公演期間中も師匠ないし、兄弟子、他の一門の先輩が聞いてくださるので、帰って来たらダメ出しをしてくださいます。それは他の一門とか関係ないです。
特に先輩が三味線弾きさんということが割と多いです、太夫と三味線弾きの関係でいうと。三味線弾きさんからダメ出しを受けることもあります。
毎日毎日稽古をして、本番が稽古とよく言いますが、本番をこなしながら勉強しています。
---太夫としての公演・お稽古だけでなく、末弟として様々な業務に従事され、ご多忙の様子。
そして話題は咲寿さんのSNS活動へ。
Q:SNS更新を毎日されていますが、さらに公演もあってすごいですね。欠かさず投稿を続ける理由は?
A:文楽はいま固定のお客様、リピーターの方で成り立っていて、すごくありがたい状況です。
ただ、もっとライトなお客様が増えて欲しいと思っています。
そういったお客様に見て頂くきっかけがないんですよね、現状の文楽には。なんでもいいので見て頂くきっかけがほしいので、その一環でSNSは始めました。
文楽を見て頂くために、やっています。
Q:Twitter見て来ました、というお客様はいらっしゃいますか?
A:多いです。最近はインスタに移りつつもあるんですけども。きっかけになって来てくださる方もいてて、「このあいだ拝見しました」と声をかけてくださる方もいらっしゃいますし。
やっててよかったと思う瞬間ですね。そういう時は。
---文楽界のこれからを見つめる咲寿さん。ひとつひとつの積み重ねが、明るい未来につながっていくことを願ってやみません。
そしてさらに、咲寿さんご自身の未来について、話は広がっていきます。
Q:咲寿さんの脳内は・・・
A:基本的に、全部文楽です(笑)
過去の芸、というのは文楽の過去の芸のことです。時代ごとに芸って変わっていってまして。
今の時代、50年前の時代と、残ってはいないですが100年前は違うような形でやっていたと思うんですね。
昔の文献とかレコードだと7、80年前まで残っているので、そういうったものを聞いて、どこが違うのかを考えると、今の芸の特色が見えてきて、参考になります。
Q.よくTwitterで「文楽」を検索すると、「今と昔では全然違う」というのを見かけますが。
A.違います。違います。この50年だけでも全然違いますので。
それぞれの年代ごとにトップの太夫さんなり三味線弾きさん、人形遣いさんがいてて。
その人の芸っていうのがベースになるというか、それをみんな真似していったりするわけじゃないですか。そうするとそれをその人の個性でまた芸が変わっていったりするので。
少し前だと(竹本)越路太夫(たけもとこしじだゆう)師匠、(竹本)大隅太夫(たけもとおおすみだゆう)師匠がいてて、今は私の師匠(豊竹咲太夫 とよたけさきたゆう)が一番上ですけれども。そういった形でそれぞれ芸の種類が全然違うのです。
聞いている方も「この人が、一番文楽で芸が上手な人なんだ」と思って、その人の芸が文楽の一番正しいものと思って入るわけですから。聞いている人にとっても昔とは違うんだなと思ってしまうでしょうし。
今のお客様でもお年寄りの方だと「越路太夫さんのと違うなと」思われる方ももちろんいらっしゃいますし。切り場語りの太夫も今は師匠の咲太夫だけで、今はじめて聞いた方だと、私の師匠を聞かれて「文楽だな」と思って、50年後くらいには私たちが上になって、もっと下の子達がいてて、「文楽が変わったな」と言われるんだと思いますね。
Q:自分の芸について。先日、咲寿さんのブログで新人公演後に「自分のために舞台に立つのは20代で終えると決めました」とありましたが。がらっと何かがかわったんでしょうか。
A:9月で30歳になるんですよ。だんだん気持ちが変わって来たというのがあります。この2、3年くらいでそういう気持ちが強くなって来ました。
20代前半は自分のことだけで手一杯だったんですが。今は文楽というものを、ひいては上方文化を残したいという気持ちが強くなっていますので。やっぱり、芸能として、上方の文化というものを残していきたい。
だから自分のためだけ舞台に出るのは20代で終わりだなと感じたのが、今回の新人公演でしたね。
Q:お稽古の仕方も具体的に何かを変えながらやっていくということですか?
A:お稽古の仕方は基本的には変わらないんでしょうけれど。精神的なアプローチが変わっていくんだと思います。自分の芸を磨くというか。
稽古するにあたっても自分の、今までだったら自分の特色を生かしてみたいとか、そういう欲があったりだとか。
例えば高い声が得意なのでそういうところでよくばって、綺麗な声を出してみたいだとか、そういうところがあったんですけれども。
だんだん色んな役をやらせていただくようになって、それだけではやっていけないことがたくさん出てくるようになりまして。
自分の苦手な部分を克服していかないと、そもそも文楽の義太夫としての芸を自分が体現することができないと、ようやく気づいたんですね。遅いぐらいだと思うんですけれど。
これからの稽古としては30〜40歳、自分が舞台の上で、多少かっこ悪くてもいいので挑戦する、そういう姿勢を忘れないようにしたいです。日和らない。どんどんぶち当たっていきたいですね。
お客さんの前で失敗しても、お金を払って頂いて、完璧でなく申し訳ないんですけれど。
完璧な芸は存在しないという意味でも、どんどん失敗をしていきたい。今までは失敗が怖かったんですね。
どんどん失敗して恥をかいて磨いていきたい。そういうスタンスに変えていきたいです。
---まさにPHYTOGRAMがケアしたいと考えている、「仕事でのステップアップなど環境の変化」の渦中にいる20代男性の声でした。
熱いお話の次は閑話休題、趣味の話題へ。
Q:宝塚がお好きと聞きました。
A:好きなんですよ〜。もう(文楽は)はおっさんばっかりでしょう?(笑)現実逃避しにいきます。
中々観に行けませんが。チケット取りにくいですし。紅ゆずるさんが好きで、花組公演の「ポーの一族」は観劇しましたが素晴らしかったです。
びっくりしちゃって。最高でした。
Q:宝塚のヅカメイクに興味はありますか?
A:ありますよ。僕の髪型とか基本、宝塚を真似してますもん。
(僕は)髪の毛が、頭皮に対して直角に生えているので、切りすぎるとマリモみたいになってしまうんですよ。短髪だと広がってしまうので、抑えられないんです。
なので長髪にしています。でも長髪にしていると伝統芸能らしくなくなってしまうので、宝塚の巻き方を参考に。
Q:床では、前髪はオールバックという決まりがあるんですか?
A:あります。昔は鬢付(びんづけ)油じゃないですが、今だとジェルできっちり固めて。光が当たってテカっているような。そういう上方の文化はありますね。
あとは坊主。文楽の名人は坊主が多いので。いつか坊主になっているかもしれませんね。
40年後はピカーンと。(笑)
Q:お酒を飲まれると思いますが、カクテルを飲むこともありますか?
A:カクテルは好きです。お酒が好きで自宅ではあまり飲みませんが、スコッチ・ウォッカ・ウイスキー等。味の強いお酒が好みです。
シュワシュワの強炭酸(コーラ)は苦手です、ビールは飲めますが。
Q:実は、7月1日新発売の2アイテムはバカンスにぴったりの商品を作りたいという想いでたどり着き、カクテルをイメージしたアルコール0%のスキンケアシリーズです。
率直に商品の印象をお聞かせください。
A:(ブルーハワイを手に出してくださり)めっちゃきれい!いい匂いですね。特にブルーハワイはパッケージを見ると、おぐねぇーさんの顔が浮かびます(笑)
パッケージはブルーハワイ・モヒートどちらもキレイ。香りは強くないものが好きなんです。
べたつかない、サラサラとした使用感も良いですね。
Q:スクラブ洗顔のモヒートですが、スクラブは植物性で刺激が強すぎず、優しく洗えるそうです。
A:それはいいですね、スクラブのゴリゴリした刺激もあまり好きではないんです。
普段、顔から汗をかかないが公演後は汗をかくので、洗顔しスキンケアをしています。スッキリとしそうなので良いですね。
Q:イケメン太夫さんということで、注目されていますが、お仕事柄人前に出る上でお肌の調子は気になりますか?
A:気になります。高校時代は陸上部だったので紫外線を浴びる時間が多くニキビに悩まされました。赤くなって膿が出てしまうタイプのニキビですね。
疲れると顎にニキビが出来るので身体が疲れていることを教えてくれます。ニキビが落ち着いた後は乾燥肌になってしまうので、つねに保湿はしていますね。
この世界に入ってから、先輩達に化粧品を教えてもらい、スキンケアを始めました。
Q:PHYTOGRAM誕生の際、咲寿さんにはモニターを引き受けていただきました。商品ビジュアルや使用感、使用を続けてお肌に変化は見られましたでしょうか。
A:肌の赤味がなくなりました。 肌のトーンも明るくなりましたよ。乾燥肌なのですが、乾燥も気にならなくなりました。
メンズコスメにある「スーッ」としたものが好みではないのでフィトグラムは肌に優しく、気に入っています。
肌が包まれている気がしますね。
Q:モニターをお願いする以前から、メイコー 化粧品はご存知でしたか?
A:はい、今日も使っていますよ。MCコレクションの、ピンクが入ってるやつ。。。カバーフェイス?
(目の周りを指して)この辺に今日も塗っていて、その上からドーランを塗っています。
ニキビ跡隠しに使っています。
Q:以前からお使いだったんですね.
A:PHYTOGRAMの初回モニターのお話がきた時は「メンズが出たんだ!」という驚きがありました。
Q:メイクさんに教えてもらったんですか?
A:偶然。合いそうだなと思って手に取ったのがメイコーでした。
(メイコーショップが出店中の)あべのハルカスも師匠についてよくいくので。師匠がいない間に見て回ったりする中で、偶然です。
Q:時代はメンズコスメが流行・スタンダードになりつつあります。興味はありますか?
A:僕はあります。座内でも興味ない人はないですが。僕は興味があるので、普通にメイクしてもいいやん、とそういう気持ちでいます。
ただ、ガッツリメイクする人はいないかな、文楽の人には。舞台に立つ以上、してもいいんじゃないかなと思いますけどね。
Q:今もコンシーラーでメイクされているということですが、言われなければわからないほど違和感ない使い方をされていますね。
A:そういう風にメイコーさんが作られているんですよ(笑)
(メイクについては)まだ抵抗感がある人も多いですけど。営業マンの方もメイクしても良いんじゃないかなと思いますね。ベースメイクをすると顔が明るく見えて得じゃないかなと思います。
Q:肌が綺麗なだけで印象ってよくなりますよね。
A:そうですよ。スタバに綺麗な顔の男の人がいたら行くでしょ?(笑)
Q:確かに(笑) 咲寿さんはもっと男性もメイクしていこうよ!という感じでしょうか。
A:そうですよ!
Q:ありがとうございました。
---仕事と趣味とスキンケア。どれも余すことなく語って頂いた咲寿さん。
文楽の未来を支える咲寿太夫を、PHYTOGRAMはこれからも応援していきます。
インタビューシリーズ『仕事人<しごとびと>が語る』
第1回は、文楽太夫の豊竹咲寿太夫さんにお聞きしました。
次回の更新をお楽しみに。
豊竹咲寿太夫さんのSNSはこちら
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